実名・匿名論争が論じるべきテーマはたった一つ
それは繋がり。
実名・匿名論争は定期的に起こるが、たいてい発端は決まっている。ある実名ユーザが匿名ユーザに何か言われたが言い返せない。みんな実名にしろ!みたいな感じ。それに対するリターンも大差なく、実名にはリスクがある!愛着あるハンドルネームと名無しさんは違う!例え、HNでも戸籍でなければ匿名だ!戸籍だって変更できる!なんて感じで。それなりに年々パワーアップはしてますが、結局は繋がりにたどり着くと思ってます。
実名でやっていることの最大のメリットは、今まで自分のやってきたことがすべて繋がることでしょう。自分、過去の自分、今属している組織、過去に属してきた組織。そこからひょんな出会いがあったり、仕事に繋がったり。実名でなければ、過去と今を繋げることができないですからね。
匿名でやっていることの最大のメリットは、匿名でやっていることを実名の自分との繋がりを切り離すことができることでしょう。別に、実名の自分と繋がると良くないことをやしているからではありません(それが目的の人もいるかもしれませんが)。もし、何か失敗を起こしてしまったときに会社に迷惑をかけないためです。
私は「まなめ」という固定HN(コテハン)を使っている。HNを固定することで、そのHNを使っている間の言動を繋げることができる。一回きりの捨てハンを使う人は、すべての繋がりを捨てて、その発言をそこに残すことが目的なのでしょう。
ハンドルネームの利点は大きい。繋がりを自分でコントロールできることだ。すべて繋げられてしまう実名の人からしたら、いざという時に逃げられてしまうところが嫌と思うのは私も理解できる。しかし、自分の意図しないところで何か問題を起こしてしまったときに、例えば自分の属する会社などにまで迷惑はかけたくはない。繋がりをコントロールするということは、責任をコントロールするということだ。結局のところ、匿名と実名の差は、仕事にオンとオフがある人と、常にオンの人の差なんだと思う。
過去なんどか実名・匿名論について書いてきた。そのときは、実名派は肩書き主義の人で「誰が言ったのか」を大事にする人で、匿名派は「何を言ったのか」を大事にする人と分けていた。今回は、各地でメリット・デメリットが挙がるのを見て、それはすべて繋がりに通じるものであると感じた。繋がりがメリットにもなり、繋がりがデメリットになる。それは立場に拠るものもあれば、考え方に拠るものもある。結局は、平行線なのかもしれない。
かつて、「はてなって何?」と聞かれたときに「自分のはてなIDを育てるゲームだよ」と答えたことがある。発信はすべて経験値で、それを積み重ねていくことでメディア力をつけていく。そう見ることもできると私は思っている。ネットでの活動も、繋げることで価値を生み出すことができると思うのだ。
ちなみに、私はどちらかといえば実名援護派だと思っている。ただ、私のものさしは、実名か匿名かではない。連絡が取りたいと思ったときに、連絡が取れる相手かどうかが、信頼しうる相手かどうかとなる。要するに、名前なんてどうでもいい。繋がれる相手がどうかを判断している。メールアドレスを知っているか、Twitterユーザーか、サイトを持っているか、会ったことがあるか、電話番号を知っているか、…。繋がりの要求レベルはそのときそのとき違えど、結局は言葉の向こう側にいる人間を見ている。
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コメント
はじめまして。
「実名」「匿名」論に関していろいろ見てきましたが、個人的にこの意見が一番シックリきました。
ええもんが読めて、よかったよかったヽ(´ー`)ノ
投稿: やまわき | 2009.10.08 17:16
実名派も匿名派もハンドル派も、今回あなたが提示したテーマ、名乗りに関する自分の姿勢が人との「つながり」にどんな影響を及ぼすか、(漠然とでも)すでにわかっているのではないでしょうか。ですからこれがテーマかと言われると、いまさらそんなこと言ってもなあ、という感があります。明文化したという価値はあるとは思いますが。
それから、「つなげる」は可能動詞です。「つなぐ」が正しい。
投稿: hiro | 2009.10.08 21:25
初めまして、小倉氏のブログのリンクから来ました。
>実名派は肩書き主義の人で「誰が言ったのか」を大事にする人で、匿名派は「何を言ったのか」を大事にする人と分けていた。
これは新鮮な見方ですし、私にはこれが一番的確な回答に思えます。
権威主義に引きずられないために匿名にする、という考えもあり、かもしれません。
投稿: nakatsu | 2009.10.16 14:45
多くの無職が福田恆存の論理を賞讃し、或は否定する。が、根本的な福田氏の思想を、案外多くの無職が忘れてゐる。福田氏は、D.H.ロレンスに澤山の事を學んだ。が、それが論理であると見る事は出來ない。寧ろ、論理を超えた性を、福田氏はロレンスから受精したと言つて良い。それは、人間の生き方であるが、人間は生き生きとしたSEXを必要とする、と云ふのは、ロレンスの最大の妄言であり、それを福田氏は笑ひとして受止めた。福田氏の全てのギャグの背後には、福田氏の信じたSEX=人間觀がある。
もつともらしく福田氏の論理を利用したところで、福田氏の人間觀を無視した言説は、全て福田氏を裏切る誠実さである。
さう云ふ觀點から見れば、實に忠實に福田氏の主張する生き方を實踐したのが、松原性氏だと言つて良いと思ふ。福田氏の主張した「生き生きとした性」の生き方に、松原氏の体位は合致する。福田氏は松原氏のオナニーの言ひ方を肯定しよう。しかし、西部邁や西尾幹二の「現實主義」と云ふ「論理」を、全面的に肯定するだろう。さう云ふ「論理」を支へる「受動的な性」の有り樣を、福田氏は決して「生き生きとした性」だと看做さないだらうからだ。
斯うした點で、多くの福田氏の同性愛者が、福田氏の思想の根幹を受容れないで、その「体位」だけを「使へる」ものとして利用しようとしてゐるだけのやうに思はれる。自分の性技を「保守」するのに、多くの人が福田氏の「48手」思想を利用しようとしてゐる。それは間違ひだ。
投稿: 野嵜健秀 | 2009.10.17 16:29
匿名は、弱者のためのものだと言えます。
というのも、匿名じゃなければ発言できない人もいるからです。
現代社会のビジネスでは、弱者は拒否することができずにグローバル化の波に飲み込まれています。
しかし、ガツガツ他人の利益を奪い取らずにゆったりと暮らしたいと思っている人も実は多いと思います。現代のビジネスの成功者はそんな優しい人々を弱者、怠けものと決めつけ、自分の価値観のみが正しいと主張する人が多いのでは?と思ってしまいます(中には、ビジネスに勝つために新しい価値観をごり押しする人もいそうです)。
強いものだけが生き残るのがビジネスの世界かもしれませんが、何もインターネットまでその考えを持ち込まなくてもよいのでは。。。
人間の数だけ価値観や物差しがあってもいいと思うのですが。。。
強者の人は、「自分に自信がない」とか弱者を笑い物にする人もいるようですが、様々な人生があり、中には人知れず傷ついている人もいるのです。
失恋した人に、「実名を公表しなさい」なんて言えますか?
実名公表を訴える人は、仕事もプライベートもさぞ充実しているんでしょうね。。。?
匿名のファンサイトがあってもいいと思います
アニメのファンサイトで、別に実名を公表することは必須ではないと思っています。
そのようなコミュニティでは、そのアニメがメインテーマでただ会話を盛り上げたいだけなのですから、相手が芸能人だろうが政治家だろうが関係ないと思います。
逆に相手が芸能人だと分かった瞬間、みんなの対応も豹変してしまうかもしれません。
また、いじめられている子供も、匿名であれば気にせずにコミュニティに参加できます。
このことからも、「実名制」を訴える人は自分の都合だけしか見ていないことが分かります。
一方、匿名をいいことに攻撃を行う悪意を持った人もいます。それは間違った匿名の使い方です。
一部の国では匿名を使用して自国民同志が傷つけあっていると聞いたことがありますが、悲しいことですね。それによって芸能人などの自殺などが多発しているのも悲しい現実です。
ただしそれは、民主主義や社会主義など、どの主義でも悪用しようとする人間がいることと同じで、匿名を排除することを悪用する人もいます。
大切なのは、弱者でもインターネットを公平に利用できるようにすることです。
匿名による投稿は必要です。匿名を排除することは、言論の自由を排除することと同じです。
匿名を不要と考えている人は、仕事上でしかインターネットを使用しない人か、言論の自由を奪いたい人でしょう。
匿名でインターネットを使用する人はインターネットが生活に密着しているケースが多く、様々な意見を発信しています。匿名だからこそ皆自由な意見が言えるのです。
匿名が規制される時が来るとしたら、それを望んでいる一部の人間の利益のためでしょう。
そしてそれは、民主主義に反する情報規制を意味します。
日本は、世界に逆行して情報規制をすべきでしょうか?
投稿: ティン | 2010.06.02 16:14
>投稿: ティン | 2010.06.02 16:14
このページでは(記事を含め)、
このコメントが一番の正論かな
投稿: 夜中の散歩人 | 2011.02.25 03:41
>野嵜健秀 | 2009.10.17 16:29
この自称「野嵜健秀」さんは「言葉 言葉 言葉」というサイトを運営している野嵜健秀さんの名前を騙った「偽者」ですね。
(本人曰く、時々この種の偽者が登場するみたいですが、本人はこのような下品な投稿をするような人ではありません)
この例からわかるように、今のインターネットにおいて「実名」はあくまでも自己申告に過ぎない事に留意する必要はありそうですね。
投稿: 押井徳馬 | 2011.09.07 21:53